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産後の心とカラダ その1
自分ではコントロールすることが難しい産後クライシス
待望の妊娠を実感し、大きなお腹を抱えて10ヶ月、ようやく待ちに待った赤ちゃんを出産して、母子ともに元気でやっとやれやれ!と思うのですが、出産後のお休みもなく、当然のように育児が始まります。
夜も昼もゆっくり眠れないし、妊娠後に身体の調子が思わしくない、などということがあると、イライラしてしまい、ときには小さなことに爆発してしまうことがあるかもしれません。
産後にイライラしてしまう症状が起こるということは、体内のホルモンバランスの変化にカラダがついていくことができずにいろいろな症状を起こしてしまっているという事なのです。
カラダが体調不良になると精神的にも不調な状態に陥ってしまうことは、しばしばあります。
このホルモンバランスによって引き起こされるカラダの変化は、自分ではコントロールすることが難しい状態なのです。
その中で産後クライシスと言われるものをご存知でしょうか。
産後クライシスとは、妻(ママ)が出産後ホルモンバランスの変化や子育てなどの変化によって仲のよかった夫婦の関係が急激に悪化し亀裂が生じてしまい危機的な状態に陥ること。それを現すことばを産後クライシスと言います。
妻の出産後2~3年位の時期に急激に夫婦の仲が悪くなる、という現象は昔から広く知られている事でした。専門の学者は昔からこのことに注目して研究をしており、母親側の問題に焦点をあてて「育児ノイローゼ」「産後ブルー」などと言う言い方をしていますが、夫婦のことに焦点を当てた言葉が「産後クライシス」です。
いくつかの要因が絡み合って起こる産後クライシスの原因
産後クライシスは、いくつかの要因が絡み合って起こる現象なのですが、ホルモンバランスの変化や体調不良、育児疲れ、ライフスタイルの変化などにより、心身両面に影響を受けていることが原因と考えられます。
そして、もう1つ妻が夫の育児や家事への関わり方について不満を持つ、ということが産後クライシスの大きな要因になるようです。育児や家事に積極的に関わろうとしない夫の無理解な態度に妻の不満がつのってしまうのです。
母として、家事に育児に忙しかったり、ストレスや睡眠不足で疲れていたりすると家にこもりがちになるため気分転換しにくく、孤独感が強まる、などの要因が関係しています。
ちなみに母親には母乳の分泌促進のために出ているプロラクチンというホルモンが、「敵対的感情」を引き起こすという研究結果があることも知られています。
今までは何でもない夫の一言にイライラして、我慢できず口論になり、夫に触られるのもいや!という気持ちになって、「触らないで、やめて!」と強く言ってしまったりする、などという事もあります。
頭では分かっていて、何だか申し訳ないなどと思っていても、実際には言葉では言えないし、とてもその気にならず、むしろ触られると気持ちが悪いという感情に襲われてしまう、などの現象が起こってくるのです。
これらの原因は、産後のホルモンバランスが乱れていて、感情が不安定になってしまっているためで、程度の差こそありますが、誰にでも陥る可能性のあることです。
産後クライシスと似ている状態に「産後うつ」があります。育児不安やストレス、イライラややる気が起きない、などの症状の事を言います。
産後うつは、うつ病という病気が産後に起こっている状態で、夫婦の問題ではありません。
自分で解決しようとせず、ぜひ医師に診てもらってください。
それでは、産後クライシスは、どうしたら解決できるか考えてみましょう。
こうなったのは、夫のせいだ、と夫に原因を押し付けてもなんの解決にもなりません。
これを機会に、夫婦の関係を見直して、良い関係だったことを思い出したりしながら二人の関係を深めていく、自分の態度を振り返り、改めて作り直していく、という事も大切かもしれません。
今後の子どものいる環境を見直す為にも重要な機会だと言えます。
次回は、今度は夫の側に焦点を当てて、夫側の気持ちや解決策を考えてみましょう。
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次回は 2024年 10 月 24 日(木)に配信予定
お楽しみに!
助産師 南部 洋子 先生
東京医科歯科大学医学部付属看護学校を卒業・国家資格看護師免許取得、日本赤十字社助産婦学校卒業・国家資格助産師免許取得後、東京医科歯科大学付属病院産婦人科病棟にて助産師として勤務。300人以上の出産に立ち会い赤ちゃんを取り上げる。その後女性のカラダをメインとした相談室「株式会社とらうべ」を設立。女性の味方としてすべての年齢での悩み相談を受ける。女性が自分の身体を自分のものとして理解する事。それが全ての悩みの解決に繋がっていくとの信念を持ち、日々向き合っている。
趣味は、夫と旅行、映画・音楽鑑賞、健康麻雀など。
助産師として多くのママをサポートした経験から、
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