#02
あいまいさに
耐えるということ
妊娠を告げられた瞬間から女性は「母」になろうと努力する
・・・「ご妊娠です」と産婦人科医に告げられたときの気持ち、たぶん今でも鮮明に覚えていらっしゃるでしょう。期待と不安のうちに受診して、妊娠を告げられたときのパッと広がるうれしさを・・・その瞬間から女性は「母」になろうとしています。
妊娠中には嬉しいこと楽しいことだけでなく、つわりや体調不良など、苦労や辛さがやってきますが、母親になろうとする意欲は何とかそれを克服しようとして身体が妊娠を受け入れるようにとがんばります。そうやって懸命に母になろうとしているのです。
けれども難問はこれからです。
誰が自分に元気な子どもを授けてくれると保証してくれるのでしょう。どんな産婦人科医だって、私のような優秀な(?)助産師だって、ましてや夫や実家のお母さんだって、誰も「あなたには必ず元気な子どもが授かりますよ!」と保証することはできません。もちろん励ましはたくさんもらったでしょうし「大丈夫」とか「案ずるより産むが易し!よ」などと言ってくれますが、「必ず」とか「絶対」などという保証は、結局のところ何もありません。・・・・なんと心細いことでしょう。
不安と戦いながら「あいまいさに耐える」
チカラを授かる
21世紀の現代にあって、このようなことがほかにあるでしょうか。
現代では不便だと思えば誰かが便利なものを考え、どんどん大変ではなくなっています。どんどん楽になっています。にもかかわらず妊娠は誰からの保証ももらえないまま、自分ひとりで不安と戦わなくてはならないのです。とてもとてもつらいことです。あいまいな期間が10ヶ月も!
・・・何と長いことでしょう。
その代償というかご褒美として母親は「あいまいさに耐える」チカラを授かります。
この「あいまいさに耐えること」は実は母になる上で大変大事なことなのです。不安や葛藤と戦いながら、あいまいな状態のまま妊娠を継続し、臨月になる頃には「たとえどんな子でも自分の子どもとしてしっかり育てるぞ!」という覚悟をつけさせてくれます。まるで子どもから母になることを教えられているようですね。ママしっかり育ててね!と。
あいまいさに耐えながら子どもを育てていく
この覚悟ができることが、それまでの母親準備から実際に「母になる」ことの第一歩だと言えます。出産後の現在の子育ての中で「この子を(自分の思うように)1日も早く大きくしたい!」と思っても、親の思うとおりには子どもは育ちません。
特に2~3歳くらいまでの子の親を見ていると「この子は天才かもしれない」とか「特別な才能があるようだ」だの「プロのスポーツ選手になるくらい才能がありそうだ」と親としてはひいき目に夢が膨らみます。
でも、水を差すようですがそうした期待はたいてい裏切られます。
この子が成長してどのような人間になるのかはわかりません。親の思い通りに育てるのではなくあいまいさに耐えて子どもを育てていくことが、親として、いや人間として生きていく、ということの原点なのかもしれません。
助産師 南部 洋子 先生
東京医科歯科大学医学部付属看護学校を卒業・国家資格看護師免許取得、日本赤十字社助産婦学校卒業・国家資格助産師免許取得後、東京医科歯科大学付属病院産婦人科病棟にて助産師として勤務。300人以上の出産に立ち会い赤ちゃんを取り上げる。その後女性のカラダをメインとした相談室「株式会社とらうべ」を設立。女性の味方としてすべての年齢での悩み相談を受ける。女性が自分の身体を自分のものとして理解する事。それが全ての悩みの解決に繋がっていくとの信念を持ち、日々向き合っている。
趣味は、夫と旅行、映画・音楽鑑賞、健康麻雀など。
多くのママパパが抱える子育ての不安に助産師さんが寄り添うBlog