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〜 誰にも言えない、聞けないこと 〜出産後の痔について
恥ずかしいことではない出産後の痔
妊娠中や出産後に誰にも相談できずに痔で悩んでいる方は多くいます。でも痔になることは恥ずかしいことではありません。
なぜ痔になるのか、その予防法や対処法について解説したいと思います。
妊娠中は、体内の血液が増量していて、特に骨盤周辺の血流が大きく変化しています。
これは妊娠初期から始まっていることで、胎盤に流れる血液を準備するためにカラダが水分を蓄え始めているからなのです。血液量が増えることで心臓には当然負担がかかり、いつもよりも鼓動が早くなったり、少しの運動でも動悸がしたりするようになります。
心臓から送った血液をまた心臓に戻す役割をしている静脈にも負担がかかり、心臓に戻しきれない静脈血が血管でこぶのようにふくれて溜まってしまうことがあり、これを静脈瘤といいますが肛門付近にできた静脈瘤のことを「いぼ痔」と言います。
「いぼ痔」は肛門の内側と外側両方に発生し、肛門の内側にできるのを内痔核、外側にできるのを外痔核といいます。
- ✴︎ 内痔核は痛みなどを感じることはなく症状は出血のみで、出血は鮮やかな血の色をしていて、ポタポタ落ちるほど出ることもあります。
- ✴︎ 一方外痔核では出血はありませんが、強い痛みを感じます。
また、肛門には「肛門クッション」と呼ばれる弾力に富んだ組織があり、普段は門をぴったりと閉じる役割の部位を言い、粘膜や血管が網目状に張り巡らされている静脈叢(じょうみゃくそう)の下にある筋肉の事をいいます。
立ったり座ったりする動作、出産の際のいきみ、排便時のいきみなどにより肛門に負担がかり、「肛門クッション」がゆるんだり、伸びたりしながら役目を果たしますが、「肛門クッション」を支える組織の繊維が切れるなどの原因で腫れて大きくなってしまうのです。
また産後は会陰切開の傷が気になって便秘になりやすく、硬くなった便を出そうとして排便時に力を入れすぎて「肛門クッション」を傷めることもあります。
妊娠中は、大きくなったお腹を支えるために骨盤が前傾になりやすく、また産後は便意を我慢したり、赤ちゃんを抱っこしたりして肛門に負担がかかることが多くなり、産後の痔の発症を招きやすくなる環境にあります。
いぼ痔や切れ痔予防策
《 予防策として 》
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● 食生活と水分に気を付ける
食生活や排便習慣を整えて、便秘にならないようにすることが大切です。
朝ごはんをしっかり食べて毎日同じ時間にトイレにいくようにしましょう。
根菜類、豆類、穀物に多く含まれる食物繊維は、便の量を増やしたり、軟らかくします。
水分不足も便秘の原因になります。1日に摂取したい水分量は約2.5Lですが、食事でとれる水分は約1.3Lといわれているので、残りの1.2Lは意識して飲むようにしましょう。コップ1杯を7~8回に分けて飲むと無理なく必要な水分を摂ることができるでしょう。 -
● 姿勢に気を付ける
腰をそらして、お腹を前に突き出す姿勢は、肛門に負担がかかります。赤ちゃんの抱っこもお腹の上に乗せるような抱っこは避け、下半身と腹筋を使って、まっすぐに身体を支えるようにしましょう。
座ったまま長時間作業をする人に痔の症状が出やすい傾向があります。座ったままの姿勢が「肛門クッション」に負担をかけて、肛門周囲の血行不良を招きますので、時々立って軽い運動やストレッチで身体を動かしましょう。
座るときは、ドーナツクッションなどを使うと肛門周辺に空間ができて、血流が滞るのを避けられますので試してください。 -
● 冷えやストレスを避ける
冷えやストレスがあると、血流が滞って、血行不良に陥り、筋肉の緊張も高まります。
産後は、身体を温めて、リラックスする時間を作りましょう。
お風呂にゆっくりつかる、マッサージをする、お腹周りを温めるなどして血行を促しましょう。
いぼ痔や切れ痔は、鋭い痛み、かゆみ、不快感などがでます。排便の際にウォシュレットやティシュで必要以上に刺激をすることで、症状の悪化につながり、また慢性化の原因にもなりますので気をつけてください。
痔になってしまったら、肛門を清潔に保つ必要がありますが、洗いすぎると悪化する場合もあるので、注意が必要です。 つらい時は、恥ずかしがらないで肛門科を受診して相談しましょう。
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次回は 2025年 2 月 13 日(木)に配信予定
お楽しみに!
助産師 南部 洋子 先生
東京医科歯科大学医学部付属看護学校を卒業・国家資格看護師免許取得、日本赤十字社助産婦学校卒業・国家資格助産師免許取得後、東京医科歯科大学付属病院産婦人科病棟にて助産師として勤務。300人以上の出産に立ち会い赤ちゃんを取り上げる。その後女性のカラダをメインとした相談室「株式会社とらうべ」を設立。女性の味方としてすべての年齢での悩み相談を受ける。女性が自分の身体を自分のものとして理解する事。それが全ての悩みの解決に繋がっていくとの信念を持ち、日々向き合っている。
趣味は、夫と旅行、映画・音楽鑑賞、健康麻雀など。
助産師として多くのママをサポートした経験から、
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