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#32
〜 誰にも言えない、聞けないこと 〜妊娠中及び産後の尿漏れについて

産後の尿漏れを防ぐためには 骨盤底筋に負担をかけないことが大切

産後の尿漏れを防ぐためには骨盤底筋に負担をかけないことが大切

もともと女性は男性と比較してみると、尿道が短いために尿漏れを起こしやすいカラダの構造になっています。女性のカラダの構造上膀胱の位置は、恥骨のすぐ後ろにあり子宮の前にある為に妊娠・出産の際には影響を受けやすいということなのです。妊娠経過に伴って子宮が大きくなるとその前にある膀胱が常に圧迫された状態になり、膀胱の容量が小さくなる為にたくさんの尿をためておけなくなり頻尿になって、尿漏れが起こりやすくなるのです。また膀胱は骨盤内にあるのですが、位置は身体の前方から膀胱、子宮、直腸と並んでいて、骨盤内にこれらがひしめきあって納まっていますので、これらの臓器が骨盤の底から落ちないようにハンモックのように支えているのが骨盤底筋群と呼ばれるものなのです。

妊娠前は腹圧がかかっても骨盤底筋の力が働いているので尿漏れはしませんが、妊娠中は大きくなっていく子宮を骨盤底筋群が持続的に支えていて、常に引き伸ばされている状態となっており、筋力が弱くなってしまう傾向にあります。くしゃみをしたり、大きな声で笑ったりして腹圧がかかった際にゆるんだ骨盤底筋に圧がかかり尿漏れが起こってしまいます。また妊娠経過に伴って姿勢が変化していきますが、それも骨盤底筋に負担をかける原因となる場合があります。子宮が大きくなってくると腹筋によって支える力が弱い場合などは立ったときに腰を反らせてしまう傾向にあります。すると骨盤は前に傾きがちとなりさらに子宮の重みで前下方に傾くので骨盤底筋への負担がより大きくなってしまいます。

尿もれの原因には妊娠中の太りすぎや妊娠高血圧症など、お産が重くなる要因にも気を付ける事が重要です。難産だったりしたら骨盤底筋に負担をかけることになります。

また、出産後は骨盤底筋が緩んで尿道の締まりが悪くなり尿漏れにつながったり出産によって神経線維が傷つけられて膀胱や尿道の知覚に障害が起こりやすくなり尿意を感じにくくなったり、尿が出ないなども起こる可能性があります。

でも骨盤底筋が回復してくれば自然に治ってきますので安心してください。産後の尿漏れを防ぐためには、何よりも骨盤底筋に負担をかけないことが大切な事です。

尿もれしない為の 産後の過ごし方 

尿もれしない為の産後の過ごし方 

出産でダメージを受けた骨盤底筋は、順調に行けば産後1~2か月で回復してきます。
その為には出産後3週間は赤ちゃんへの授乳やお世話以外は横になって休み、重い荷物などを持たないようにし、外出も控えるようにしましょう。これはお産がどんなに楽であろうと体が回復するのに必要な期間なのです。重い荷物を持てるほどに回復するのには6~8週間は必要です。
ここで無理をしてしまうと後々にひびくことになるので注意したいですね。

《 産後のガードルはNG 》
以前、産後すぐにガードルをつけてお腹をひきしめることが推奨された時期がありましたが、ガードルを付けることによって子宮や膀胱を下げてしまい、骨盤底筋に負担が掛かり結果尿漏れが長引く原因になる事があります。1か月健診まではガードルはやめて、身体を休ませることに専念し骨盤底筋を回復させるようにしましょう。
出産の際に分泌されるホルモンには、靭帯や筋肉を緩める働きがありますので、その影響で出産後骨盤がしっかりしまるには3~4か月位かかるといわれています。産後の尿もれは一過性のもので個人差もありますが、お産の状態によって長引く人もいます。その間は、尿漏れパットなどを使用して回復を待ちましょう。

《 お薦めの「ゲーゲル体操」 》
出産後の1か月健診で順調に回復しているならば体操をしましょう。
「ゲーゲル体操」は座っていても立っていても横になっていてもできるものです。おしっこを我慢するときのように(尿道・膣・肛門周辺の筋肉)に力を入れて引き揚げる。そのまま10秒間キープ、その後力を抜いて10秒ゆるめる。その動きを10回繰り返す。それを1日4~6セット行う。
この「ゲーゲル体操」はいつでもどこでも自分がやろうと思えばできる体操です。骨盤底筋という地味な筋肉の運動ですが、毎日コツコツ続けることが大切です。3カ月くらい続けると効果が実感できます。

尿もれ予防には姿勢にも気を付けましょう。猫背だと呼吸が浅くなり、内臓が押し下げられて、骨盤にいつも圧がかかっている状態になりますので、尿漏れを起こしやすくなりますので注意が必要です。
尿もれを防ぐ為には、日頃から骨盤底筋群を引き上げる姿勢を意識しながら、ゆっくりとした深い呼吸を心掛けるようにしましょう。
妊娠・出産を経験した人には尿漏れはめずらしいことではありません。悩まず、必要以上に気にしないで、自然に回復する時期を待ちましょう。

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次回は 2025年 3 月 13 日(木)に配信予定
お楽しみに!

助産師 南部洋子先生
お話いただいたのは

助産師 南部 洋子 先生

東京医科歯科大学医学部付属看護学校を卒業・国家資格看護師免許取得、日本赤十字社助産婦学校卒業・国家資格助産師免許取得後、東京医科歯科大学付属病院産婦人科病棟にて助産師として勤務。300人以上の出産に立ち会い赤ちゃんを取り上げる。その後女性のカラダをメインとした相談室「株式会社とらうべ」を設立。女性の味方としてすべての年齢での悩み相談を受ける。女性が自分の身体を自分のものとして理解する事。それが全ての悩みの解決に繋がっていくとの信念を持ち、日々向き合っている。
趣味は、夫と旅行、映画・音楽鑑賞、健康麻雀など。

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