#24
産後の心とカラダ その2
男性から見た産後クライシス
前回の産後クライシスでは、産後クライシスになるのは夫婦の問題、とお話しました。
女性は出産後のホルモンバランスが乱れることによって、感情が不安定になり、小さなことでもイライラしてしまって、夫婦関係が急激に悪化してしまうと言う内容でした。
前回は女性から見た産後クライシスを検証しましたが、今回は男性から見た産後クライシスについて検証してみたいと思います。
出産後、夫の側からみると、急に妻の人格が変わったようにみえる。あんなに優しかったし、怒りっぽくなかったのに何故・・という気持ちになるようです。
でも考えてみてください。このシリーズ「 #02 あいまいさに耐えるということ 」でも書きましたが、女性は妊娠すると、10ヶ月間不安な気持ちとともに生きています。この不安な気持ちでいることが女性に覚悟をもたせ、何があってもどんな子どもでもしっかり育てていこう、という気持ちに成長しているのです。心身ともに強くなって、子どもが生まれる責任やいろんな重要なことをはっきり認識するようになっていきます。
子どもができる前は、いい妻でいようと甲斐甲斐しく夫のお世話をしていたかもしれません。自分も仕事をしていても頑張って家事をすべてこなそうという気持ちになっていたでしょう。そのお陰で夫は楽をしていた可能性もあります。
しかし、いざ子どもができて赤ちゃんのいる生活が始まると、ママは子育てに一生懸命で子どもに全ての気持ちが行っていますから、今までのように夫の世話をする時間がありません。
子どもができる前のように妻にいろいろ期待してもそれは無理なのです。
でも同じようにやってほしいという気持ちの夫は、「俺と子どもとどっちが大事なんだ!」などと暴言を吐いてしまったりします。つまり夫は、男として父親になる為に成長しなくてはいけないのですが、その方法やチャンスをつかめないでいます。
出産後の妻は、一番大切なのは子どもに決まっているのです。「何があってもこの子を守るのは私だ!」という強い決意ができているからです。
かわいい家族が増えて生活が丸ごと変化夫婦の関係も変化していくのは当然のこと
随分前ですが、女性タレントが出産して1年位で夫である野球選手と離婚したことがありました。それについてコメントするために、モーニングショーに顔を出したことがあります。これは産後クライシスなのか ! ということでした。
妊娠中の夫の浮気が発覚したのです。妻は速攻離婚したというものでした。
夫は、「妻が相手をしてくれない」というようなことを理由に上げていたと思います。
まさしく産後クライシスだと思います。私が胸をときめかして結婚した相手はこんなに幼稚な男だったのか!そのことがはっきりした、ということだと思います。
私の考えですが、男性(夫)は最低限自分の身の回りのことを自分でできるようにしておくこと、それがとても大事なことだと思っています。一人住まいをしたことがある男性はある程度身の回りのことができるのですが、自宅で母親に面倒をみてもらっていて、そのまま結婚した、という状況となると、何もできない状態です。
お風呂からあがれば、下着やパジャマが用意され、出勤前にはハンカチなど忘れ物のないように気を配ってくれたり、様々なことをしてもらっていたことを一人暮らしだとすべて自分でやらなくてはいけません。引き出しのどこに自分のパンツが入っているのか、洗濯の仕方やたたみ方、掃除機の掛け方、そのあたりからが自立の一歩としてください。
その自立ができない人・自立したくない人が、妻以外によそに女性を作ったりしているのではないか、と私は推測します。
それではこの状態をどうしたらよいのでしょうか。
夫は子どもに対して自分もなにかしないといけない、と思って頑張ろうと思っていますが、妻は新米パパに対して、やり方が下手、とか自分がやったほうが早い、と言ってやらせない。夫はやっとの思いでやろうと思っているのに、妻がそんな態度なら何もやらない、と腹を立てるという構図がよくあります。普段から協力的でない、と不満を持っている妻なのに、手を出されると文句をいう、これでは夫は何もできません。
最初から何事も上手な人はいません。回数を重ねて上手になるのですから、少し我慢して何回もやってもらいましょう。
そして、夫は、妻から1日の出来事や日々のことについてちゃんと話をききましょう。
小さな子どもの変化でも一番わかりあえるのはパパとママ。ちょっとしたことでも今日一日の話をしてママは一緒に喜んでもらいたいのです。一緒に喜んでほしいのは誰よりも夫なのです。
また夫として、自分に何をしてほしいのか、どんなことが一番大変なのか、しっかり妻の話を聴いてください。妻は話を聴いてくれるだけでも楽になるものです。
妻はカラダも心も出産後は色々変化しています。体型、容姿、行動、頭脳までも変化しています。その事実を受け入れてください。セックスを拒否することがあるかもしれません。でもそんなときも、今はそういう気持ちなんだな、と広い心で、寛容な気持ちでいてください。
出産によって、かわいい家族が増えて生活が丸ごと変化していきます。夫婦の関係もそれにつれて変化していくのは当然のことです。こんなはずじゃなかった、と過去に囚われるのではなく、関わりあうことで、積極的に育児をすることで、楽しい時間のパートナーでもあり、大変なときは、助け合い、支えあい、相談しあう関係を築くことができれば、産後クライシスは乗り越えられるでしょう。
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毎月 第2・第4木曜日に更新
次回は 2024年 11 月 14 日(木)に配信予定
お楽しみに!
助産師 南部 洋子 先生
東京医科歯科大学医学部付属看護学校を卒業・国家資格看護師免許取得、日本赤十字社助産婦学校卒業・国家資格助産師免許取得後、東京医科歯科大学付属病院産婦人科病棟にて助産師として勤務。300人以上の出産に立ち会い赤ちゃんを取り上げる。その後女性のカラダをメインとした相談室「株式会社とらうべ」を設立。女性の味方としてすべての年齢での悩み相談を受ける。女性が自分の身体を自分のものとして理解する事。それが全ての悩みの解決に繋がっていくとの信念を持ち、日々向き合っている。
趣味は、夫と旅行、映画・音楽鑑賞、健康麻雀など。
助産師として多くのママをサポートした経験から、
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