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#38
妊娠中の母体の異常

妊娠期間は慎重にしっかり自己管理を 妊娠中に起こり得る異常とその予防

妊娠期間は慎重にしっかり自己管理を妊娠中に起こり得る異常とその予防

初めての妊娠では、妊娠したことがわかると喜びと共に一抹の不安がわいてくる人がいらっしゃるかもしれませんが、妊娠出産は本来生理的で自然なもので、多くの方は順調に経過していきます。ただ、その期間は慎重にしっかり自己管理をしていかないと危険なことが起きる可能性を秘めていることも覚えておいてください。
「案ずるよりも産むが易し」という言葉は、「産むのが案外簡単だったわね」という意味ではなく、「妊娠中に起こるいろいろなことに注意をして、万全の状態で出産に臨んでこそ、初めて産む喜びを得ることができる」という意味だと思っています。
では、妊娠中に起こり得る異常とその予防について考えてみましょう。



妊娠悪阻(にんしんおそ)

悪阻(おそ)とは、「つわり」とも呼ばれ、妊娠初期から起きる食欲不振や吐き気などの症状の事を言い、食事や水分を摂取することができなくなる状態で、栄養代謝障害や脱水を引き起こす状態のことをいいます。「つわり」が起きること自体は問題ないのですが、妊娠悪阻は、繰り返す嘔吐と悪心(気持ちの悪さ)のため、水分補給もできない状態が続き、急激な体重減少や脱水症状が続くと入院管理が必要になることがあります。
妊娠悪阻の症状としては、めまいや頭痛、低体温、脱水症などになるので、立ちくらみ、微熱、頻脈、血圧低下、意識障害などが起こります。


〈 予防としては 〉
  • 家庭や職場でストレスが多い人ほど妊娠悪阻が多くでるので、無理せずよく寝てゆっくりできる環境作りを心がけることが大事
  • 食事は1日3食にこだわらず、食べられそうなものを食べられそうなときにちょくちょく口にすること
  • 一度にたくさん食べず、小分けにして食べる
  • 刺激の強いものは避ける
  • 意識して水分を多く摂ること。スポーツドリンクは比較的飲みやすい!


切迫流産・早産

切迫流産とは...
妊娠初期から妊娠21週の間に出血や下腹痛などの症状があり、流産を引き起こす可能性がある状態

切迫早産とは...
妊娠22週から36週の間に出血や下腹痛、お腹の張りなどがあって、早産を引き起こす可能性がある状態


上記の症状が出た場合
  • 横になり安静にして様子をみましょう。
  • 30分以上横になっていても症状が変わらないときは主治医へ連絡をしてください。

〈 予防としては 〉
  1. 1. 重たい荷物などは持たないこと
  2. 2. 体を冷やさないようにすること
  3. 3. 冷たい飲み物の飲みすぎに気を付ける
  4. 4. 無理な運動と過労は避ける
  5. 5. 腹部を圧迫する動作や長時間同じ姿勢は避ける


妊娠高血圧症候群

妊娠中に高血圧になる病気のことを言います。以前は妊娠中毒症と呼ばれていて、妊産婦の死亡原因では1位だったこともありますが、現在は妊娠中の管理が進歩して、妊娠高血圧症で死亡することは少なくなりました。しかし、今でも脳出血の原因になるなど、注意が必要です。
妊娠中に収縮期血圧 140mmHg以上または拡張血圧 90mmHg以上を発症した場合を妊娠高血圧症候群といいますが、妊娠中だけでなく分娩時や産後にも高血圧を発症する場合もあります。
血圧が上昇することで、「頭が痛い」「目がチカチカする」などの症状が出てきた場合は、すぐに病院へ連絡してください。


母体への影響としては
  • 子癇発作:けいれんを起こし意識を一時失います。
    てんかんや脳炎、脳腫瘍や薬物中毒などを原因としないけいれん発作のことを言い子癇による母体の死亡率は極めて高く命にかかわる病気なので、すぐに救急車を呼ぶ必要があります。
  • 常位胎盤早期剥離(じょういたいばんそうきはくり):母体と胎児は胎盤を通して、酸素や栄養のやりとりしており、赤ちゃんが生まれた後に胎盤は子宮の壁から剥がれ落ちるものですが、出産前に突然剥がれ落ちることを言い、妊娠32週以降におこりやすく誰にでも起こりうる可能性があります。母体にとっては妊娠中に胎盤がはがれると大量出血がおこり、妊産婦死亡の主要な原因のひとつです。赤ちゃんにとって生まれる前に胎盤がはがれると酸素や栄養の供給路が絶たれるので、未熟児、胎児仮死、死産などのリスクが高くなり、危険な状態となり、25~30%の赤ちゃんは死亡してしまいます。

〈 予防としては 〉
  1. 1. 体重のコントロールをきちんと行う
  2. 2. 塩分を控える
  3. 3. 良質なたんぱく質を十分に摂る
  4. 4. 睡眠時間をきちんととる
  5. 5. お昼の時間帯に横になるようにする
  6. 6. 長時間の外出や過労な事は避ける


妊娠糖尿病

妊娠糖尿病とは妊娠することによってはじめて診断された血糖の異常をいいます。
母体が高血糖になると、お腹の赤ちゃんも高血糖になり、さまざまな合併症が起こることが考えられます。


母体への影響としては
  • 流産早産
  • 羊水過多
  • 妊娠高血圧症候群

胎児への影響としては
  • 巨大児
  • 胎児仮死
  • 発育遅延


双胎妊娠

双胎妊娠(ふたごの妊娠)は、一人の赤ちゃんの妊娠と比較すると、切迫早産、妊娠高血圧症候群、貧血などが起きやすくなります。妊娠後半期にそのような状態になった場合は、安静を目的とした入院になることが多いでしょう。



前置胎盤

胎盤が子宮の入り口の一部または前面についてしまっている状態を前置胎盤といいます。
胎盤が子宮口を覆っている場合は、子宮口が少しでも開いてくると胎盤がはがれて、突然大出血を起こす可能性があります。そのため症状がみられなくても妊娠後期には入院して様子を見る必要があります。



最後に。
今回は妊娠中に起こるかもしれないカラダの異常について書きましたが命にまでかかわることが多いのでびっくりされた方もいらっしゃるでしょう。
妊娠はいつ異常が起こってもおかしくないことですし、赤ちゃんとママの命に係わることなので言うまでも無くとても重要な時期であると言えます。妊娠中は心身ともに健康的な生活を送り、定期健診をきちんと受け、不安なことは自己判断せず、助産師や医師に常に相談して、指示を守って信頼関係をつくっておけば、安心して出産に臨むことができますね。

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次回は 2025年 6 月 12 日(木)に配信予定
お楽しみに!

助産師 南部洋子先生
お話いただいたのは

助産師 南部 洋子 先生

東京医科歯科大学医学部付属看護学校を卒業・国家資格看護師免許取得、日本赤十字社助産婦学校卒業・国家資格助産師免許取得後、東京医科歯科大学付属病院産婦人科病棟にて助産師として勤務。300人以上の出産に立ち会い赤ちゃんを取り上げる。その後女性のカラダをメインとした相談室「株式会社とらうべ」を設立。女性の味方としてすべての年齢での悩み相談を受ける。女性が自分の身体を自分のものとして理解する事。それが全ての悩みの解決に繋がっていくとの信念を持ち、日々向き合っている。
趣味は、夫と旅行、映画・音楽鑑賞、健康麻雀など。

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