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#44
妊娠によるホルモンの変化

女性の身体は、妊娠出産の経験をすることで身体に大きな変化がもたらされます。 その1つにホルモンのバランスがありますが、妊娠中だけでなく産後にも大きな影響を及ぼすホルモンバランスがありますので、それがどんなものなのかをみていきたいと思います。

妊娠中 女性ホルモンの分泌量は大きく変化

妊娠中女性ホルモンの分泌量は大きく変化

最初に女性ホルモンは卵巣で作られているのはご存じでしょうか。女性としての成長や生殖機能を維持しているホルモンのことですが、特に妊娠中は女性ホルモンの分泌量は大きく変化します。


  • ヒト絨毛性ゴナドトロピン( hCG )
    受精卵が子宮内膜に着床すると、後に胎盤となる部分からヒト絨毛性ゴナドトロピン(hCG)と呼ばれるホルモンが分泌されます。hCGは妊娠4週頃から母体尿中に現れるため初期の妊娠判定に用いられています。
    妊娠初期には妊娠黄体を刺激して、エストロゲン・プロゲステロンというホルモンを産生させます。
    妊娠15週くらいからはプロゲストロンの産生場所が胎盤に移りますが、妊娠黄体を刺激する必要がなくなりますのでhCGは減少していきます。
    hCGは、ちょうどつわりの時期と重なることから、つわりとの関連が示唆されているホルモンです。胎児に対してはエストロゲンの原料となるDHEAを胎児の副腎から分泌させ、妊娠中期以降の妊娠維持に影響を及ぼしたり、胎児の精巣のテストステロン産生を促進したりもしています。
  • エストロゲン
    エストロゲンは、子宮筋肥大や子宮血流量の増加など妊娠を維持するための作用があり、妊娠末期には、頸管を徐々に柔らかくして分娩に備える作用もあります。また妊娠中は、抑制作用として働きますが、出産後の母乳の準備があり、出産後エストロゲンが減少することで抑制が取れ、母乳の分泌が開始されます。
  • プロゲステロン
    プロゲステロンは、ほぼエストロゲンと似たような作用ですが、妊娠中の排卵抑制作用があります。
  • ヒト胎盤性ラクトゲン
    妊娠末期に急増するホルモンです。妊娠末期は胎児の成長が大きいので、胎児に優先してグルコースを送るため母体のグルコース取り込みを抑える抗インスリン作用と、母体への栄養補給のための糖質分解作用を促進しています。

妊婦さんの身体は外見も中身もいろいろな変化を生じていますが、この変化は出産に向けての準備ですので変化することは望ましいことなのです。
つまり、身体の変化は無事出産するためのものですので、ホルモンの影響によって骨盤帯が緩むことも骨盤腔が拡大することも必要な変化なのです。

妊娠期では胎盤からエストロゲンとプロゲステロンが分泌されていますが、赤ちゃんが産まれて胎盤も娩出されると両ホルモンともに急激に減少します。
一方、産後は乳腺刺激ホルモンといわれるプロラクチン(下垂体ホルモン)や母乳分泌を促すなど子宮を元の大きさに戻す働きのあるオキシトシンの分泌が顕著になります。

出産直後 身体に及ぼす変化や影響

出産直後身体に及ぼす変化や影響

出産直後は急激なホルモンバランスの変化が起きるため身体にもいろいろな変化や影響を及ぼしています。
特にエストロゲンの急激な消退がマタニティブルーや産後うつ病の一因になると考えられています。
肌の弾力性やうるおいを保つ働きがあるエストロゲンの減少は、肌の乾燥やシワやたるみなど肌トラブルが起きやすい状態でもあります。


〈 ガルガル期 〉
産後の急激なホルモンバランスの変化に身体が適応できず、自律神経が乱れて不安定な精神状態になることもあります。その結果、些細なここでイライラする、急に悲しくなったり不安になったりもする傾向があります。
このような精勤状態が続く時期を最近では「ガルガル期」と呼ぶこともあります。
産後1~3カ月の時期にみられることが多く、攻撃的な態度をとってしまう、感情のコントロールができなくなる、などの状態です。
これは動物の本能である「子どもを守ろう」とする防御反応ともいわれています。
産後の疲れが癒えぬまま24時間体制の育児が始まり、睡眠不足で疲労がたまり、自分の時間がなくなってリフレッシュできないことのイライラなどからおきます。
初めての出産や育児のサポート環境が不十分なママは、母親として強い責任や将来に対する不安を感じやすくなり、症状が強くでてしまったりします。

〈 抜け毛が増える 〉
エストロゲンとプロゲステロンは、髪の毛を成長させ保持する働きがありますが、出産後のホルモンの急激な減少で、髪が一度に多く抜けてしまうことがあります。

〈 寝つきが悪くなる 〉
自律神経の乱れは、睡眠の質やリズムに影響を与え、疲れているのに寝つきが悪くなることがあります。赤ちゃんのお世話で夜中も授乳などで十分な睡眠がとれず、身体も心も緊張状態が続いてしまうことがあります。そのため主産の疲労が回復しない状態になり、少し休んだだけでは疲れがとれず、より疲れやすい状態になっています。

〈 尿漏れが起こる 〉
産後は、出産により子宮や膀胱などを支える骨盤底筋群が緩んでしまい、尿道まわりの筋肉や神経が伸びてしまい、尿漏れが起こりやすくなります。

〈 デリケートゾーンの悩みが起きやすい 〉
肌の乾燥が起こりやすいのと同じようにデリケートゾーンも乾燥しやすくなります。
産後しばらくは悪露がでるためナプキンを装着しますが、その摩擦や刺激も重なって、デリケートゾーンのかゆみやヒリつき、黒ずみが生じやすくなるでしょう。


産後のホルモンの乱れで最もホルモンバランスの変化が大きく心身に影響を与えるのは産後3日~5日くらいですが、そのピークを過ぎると、徐々にメンタル不調が落ちついてきます。
産後1か月すると赤ちゃんとの生活に順応できるようになって、生後3カ月くらいでは、赤ちゃんのお世話にも慣れてきて、生後5~6ヶ月頃には、離乳食も始まり、赤ちゃんも長く寝てくれることも期待できます。

産後 ホルモンバランスを整えるために

産後ホルモンバランスを整えるために

産後のママの身体は、どんなに安産で平均より短かったとしても、出産でのダメージがあるものです。身体が妊娠前の状態に戻っていく時期を産褥期(さんじょくき)といいますが、産後6~8週間までの期間は身体を休ませることを優先しましょう。
産褥期に無理をしてしまうとホルモンの乱れが長引いてしまい、その後の心身の健康に影響を及ぼしてしまう可能性があります。

自分に起こるホルモンの変化なども自覚して、妊娠・出産・産褥期を過ごしたいものです。


次回は、出産後の過ごし方をお話しましょう。

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次回は 2025年 9 月 11 日(木)に配信予定
お楽しみに!

助産師 南部洋子先生
お話いただいたのは

助産師 南部 洋子 先生

東京医科歯科大学医学部付属看護学校を卒業・国家資格看護師免許取得、日本赤十字社助産婦学校卒業・国家資格助産師免許取得後、東京医科歯科大学付属病院産婦人科病棟にて助産師として勤務。300人以上の出産に立ち会い赤ちゃんを取り上げる。その後女性のカラダをメインとした相談室「株式会社とらうべ」を設立。女性の味方としてすべての年齢での悩み相談を受ける。女性が自分の身体を自分のものとして理解する事。それが全ての悩みの解決に繋がっていくとの信念を持ち、日々向き合っている。
趣味は、夫と旅行、映画・音楽鑑賞、健康麻雀など。

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