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搾乳の仕方について
今回は赤ちゃんに少しでも多くの母乳を飲ませる為に、大切な母乳の搾乳の仕方や保存方法などをお伝えします。
搾乳して保存しておくと役に立ついろいろな場面
出産後のママは色んな赤ちゃんのお世話があって、特に母乳を直接飲ませることに一苦労ですね。母乳は何よりも赤ちゃんにとって大切ですので搾乳の方法を上手に使い母乳を捨てないで保存したいものです。
母乳を搾乳して保存しておくと下記のようないろいろな場合に役に立ちます。
- ○ おっぱいや乳首にトラブルがあり直接授乳することができない
- ○ ママが体調を崩して授乳することがつらい
- ○ 赤ちゃんが病院に入院したり、また保育園に預けたりして母乳を届ける必要がある
- ○ ママが外出するため直接授乳ができないので、家族に代わって飲ませてもらう
- ○ ママが夜寝不足なので、パパに授乳を代わって飲ませてもらう
- ○ おっぱいが張りすぎていて赤ちゃんが吸い付けないので、少し搾乳して乳房を柔らかくしてから飲ませる
上記のようなことは、誰にでも起こる可能性のあることです。また特に問題が起きていなくてもママが赤ちゃんを預けて外出することで、気分転換にもなりますね。
マスターしたい搾乳の方法
余った母乳や飲ませられないときの搾乳の仕方など、ほとんどの方がちゃんと習うことなく手探り状態でやっていることと思いますので下記の方法をマスターするようにしましょう。
○ 搾乳の方法 ○
搾乳には、手で搾る方法と搾乳器を使う方法があります。
手で搾る場合
- 1. 搾乳する前に手を石鹸でよく洗います。
- 2. 片方の手で母乳を入れる保存パックを持ち、もう片方の手で親指と人差し指でCの字のようにして当てて、乳輪の外側をつまみます。
- 3. そのまま乳輪の外側から、胸壁に向かって押し込みます。
- 4. 母乳が出てくるまで、親指と人差し指で乳頭乳輪部を軽く刺激するように圧す動作を繰り返して母乳を出します。リズミカルに搾って保存パックに入れます。
- 5. 一つの方向だけでなく前後左右斜めなどいろいろな方向から満遍なく搾乳するようにしましょう。
搾乳器の場合
搾乳器にも手動と電動があります。
- 1. 搾乳する前に手を石鹸でよく洗います。
- 2. 消毒済の搾乳器と容器を用意します。
- 3. 椅子などに座り、リラックスした姿勢をとりましょう。
- 4. 乳房の真ん中に搾乳カップがくるようにぴったりと当てます。
- 5. 吸引は、最初優しい吸引圧で刺激して、母乳が出始めたら好みに合った吸引圧で搾乳を続けます。
手でも搾乳器でも、リラックスして楽な姿勢で搾ることがポイントです。
搾乳した母乳の扱い方保存と解凍
搾乳した母乳は、常温、冷蔵、冷凍の3つの方法で保存できます。
低温で保存するほど保存期間は伸ばせますが、家庭の冷蔵庫では冷凍庫の温度変化が激しく、成分や品質が保てない可能性もありますので、できるだけ早めに消費しましょう。
○ 保存方法 ○
常温保存の場合
搾乳後すぐに飲ませるのであれば、常温保存ができます。
短期間の保存では、消毒した哺乳瓶に蓋をして置いておきます。ただし、室温が25℃を超える場合は、常温保存ではなく冷蔵保存にしましょう。
健康な赤ちゃんに飲ませる場合、母乳は6時間まで保存がきく、とされていますが、NICU(新生児集中治療室)にいる赤ちゃんは、4時間ほどとなり、保存可能の時間が短くなります。
冷蔵保存の場合
冷蔵(4℃以下)保存が可能です。
衛生を保つためにも母乳パックや専用の容器で保存しましょう。冷蔵庫で保存する場合、温度変化が大きいドア付近に置くのではなく、最も冷える奥の方に置いておきましょう。
冷蔵庫の環境を考えると、できるだけ24時間以内に使用することをお勧めします。
冷凍保存の場合
長期間母乳を保存したい場合は、冷凍で保存しましょう。
冷凍ができる母乳パックに入れて保存しますが、-18℃以下での保存期間は、約3カ月です。ただし、家庭用冷蔵庫の場合、頻繁に開け閉めをするので、温度変化が激しく、母乳の成分も変化しやすくなります。特に冷気が逃げやすいので手前で保存すると劣化が進みやすくなるので、奥の方で保存しましょう。
〈 注意点 〉
保存した母乳について、注意点があります。
まず、飲み残した母乳や一度解凍した母乳の保存をしてはいけません。
飲み残しや解凍してあまった母乳はすべて破棄しましょう。もったいないからと言って冷蔵庫や冷凍庫で保存すると雑菌が繁殖してしまいます。解凍した母乳を再度冷凍するこことも避けてください。
保存パックに日時を書いておきましょう。複数保存してあると、どれが古いものなのかわからなくなります。保存期間が過ぎた母乳を飲ませることのないように、搾乳する前に保存袋に日付を記載してください。
○ 保存した母乳の温め方 ○
冷蔵保存の場合
母乳を入れた哺乳瓶を40℃以下のぬるま湯で湯煎します。保存している間に母乳の脂肪分が分離しているので、容器を左右に優しく振って、混ぜましょう。
冷凍保存の場合
冷凍庫から取り出した保存パックは、冷蔵庫に移して12時間ほど置いて解凍します。
ただし、急ぐ場合は、パックを流水で解凍するか40℃以下のぬるま湯で湯煎してください。解凍後の母乳を適温まで温めるには、哺乳瓶に入れて、40℃以下のぬるま湯で湯煎します。早く温めたいからといって熱湯で湯煎すると、せっかくの母乳の栄養素や免疫物質が壊れてしまいます。電子レンジや鍋に母乳を直に入れて温めるのもやめましょう!解凍した母乳は早めにお使いいただくことをおすすめします。
搾乳した母乳を上手に活用できるようになると、ママの自由時間も増えてより育児が楽しくなりますね。パパや家族に搾乳した母乳の扱い方をマスターしてもらい、一緒に育児を楽しんでもらいたいですね。
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助産師 南部 洋子 先生
東京医科歯科大学医学部付属看護学校を卒業・国家資格看護師免許取得、日本赤十字社助産婦学校卒業・国家資格助産師免許取得後、東京医科歯科大学付属病院産婦人科病棟にて助産師として勤務。300人以上の出産に立ち会い赤ちゃんを取り上げる。その後女性のカラダをメインとした相談室「株式会社とらうべ」を設立。女性の味方としてすべての年齢での悩み相談を受ける。女性が自分の身体を自分のものとして理解する事。それが全ての悩みの解決に繋がっていくとの信念を持ち、日々向き合っている。
趣味は、夫と旅行、映画・音楽鑑賞、健康麻雀など。
助産師として多くのママをサポートした経験から、
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